今やコンビニにおいても、当たり前になってきた感のある手書きPOP(ポップ)。コンビニチェーンの本部でもPOPやポスターの掲載を積極的に指導をしています。
POPとは、Point Of Purchase Advertising(ポイント オブ パーチェス アドバタイジング)の頭文字をとった略語で、購買時点広告と直訳されます。簡単にいえば広告のことです。POP広告なんて言われたりもします。
商品の味を説明したこんなのとか、
出典:cotocoto.biz
キャラクターを用いて派手さのあるこんなのとか。
出典:file.gunpgunp.blog.shinobi.jp
見たことありますよね。
この記事では、手書きPOPの効果、作り方、文章の書き方、企画の考え方について順番に説明していきますので長くなりますが最後までお付き合い下さい。
手書きPOPの効果
さて、効果があるからこそ薦められるわけですが、とは言え、店長さんや店員さんの中には本当に効果があるの?忙しいからなぁと実践できていない方も多いことでしょう。
マイボイスコムの調査によると、買い物時にPOP広告を読むと回答した人は76%に達し、POP効果で商品を購入した人は25%いるという結果が出たそうです。
一番気になるのが商品が売れるのか?という点に尽きると思いますが、ボクシングのボディーブローのように、確実に売上増に影響してくるのがPOPです。
コンビニには約、2,500種類もの商品が扱われていると言われています。各メーカーはそんな商品群に埋もれないように、ひと目で商品の特徴が分かるような、また、目立つようなパッケージデザインで工夫をしています。POPなんていらないほどにです。
しかし、それが逆に商品を見えにくくしている原因でもあります。大量の商品郡、そして印刷された綺麗な文字や色は過剰な視覚情報として脳が処理するのをやめてしまい注意して見なくなってしまうのです。
パソコンから出力されたデザインがあふれている中だからこそ、手書きPOPはそのチープなデザイン故に逆に目立つのです。
手書きPOPは店舗の独自性を高める
また、手書きPOPには店舗の独自性や個性を高める効果があり、魅力的な売場作りには欠かせないアイテムです。手書きPOPで有名なのが、遊べる本屋をコンセプトに掲げるビレッジバンガードや、激安の殿堂ドンキホーテです。
どちらもひと目でそのお店だということが分かるような店舗の演出がされており、その効果を担っているのがPOPです。
ビレッジバンガードはおなじみの黄色の用紙に、クスッと笑ってしまうようなユーモアや、ドキッとしてしまうような意表を突く言葉で、商品の説明というより、注目や興味を集めることを目的としているように思えます。
ドンキには各店舗に手書きPOP専属のスタッフを置く徹底ぶりで、その重要性の高さが伺えます。大きく、カラフルに、独特な書体のドンキ文字を用い、マスコットキャラクターのドンペンも装飾。
ドンキホーテは商品の特徴もしっかり書いている傾向ですが、ビレッジバンガードと同じく、注目や興味を集めることも考えられています。
この2つの店舗は、商品点数をとにかく多くして、ジャングルのような店舗にしているため、まるで商品を自分で発見、発掘したかのような店舗戦略をとっているため商品が埋もれてしまいます。
だからこそPOPの存在が活きてくるわけです。ちなみに、ドンキの手書きPOP職人さんがその技を披露している動画がコチラです。技の巧みさに震えます。
POPを書く4軸の目的とターゲット
さてさて、ここまで手書きPOPの重要性について書いてきましたが、POPを書くには目的をはっきりさせましょう。目的は4軸で考えることができます。
○点:一点、一点、個別に
○面:商品全体もしくは、カテゴリー全体に対して
○注目・注意・興味・関心:商品に気づいてもらう、お店に来てもらう
○欲望・欲求・行動:直接的な購入につなげる
また、商品や企画のターゲットに考慮した表現でPOPを作らなければなりません。男なのか女なのか?子供なのか大人なのか?
お年寄りをターゲットにしているのに、得意だからという理由だけで今どきのアニメキャラクターのイラストを書いても響かない可能性が高そうです。
POPの書き方「デザイン編」
前振りが長くなりましたが、POPの書き方についてテクニックをご紹介していきます。
一般社団法人 日本POPサミット協会が監修し、三菱鉛筆が発行する手書きPOPマニュアルがめちゃくちゃ丁寧にデザインについて解説しているのでとりあえずコレを読みましょう。
手書きPOPに最適なマジックは三菱鉛筆社さんが発行するだけあり、ポスカとプロッキーが推されていますが、POPの講習会を開くようなデザイナーさんも愛用する人が多いマジックなので使いやすさは抜群です。
マニュアルには、マジックのすべらせ方から、フォント(書体)の書き方、文章やイラストのレイアウト方法、配色の例など、盛りだくさんの内容なのでこのブログでの説明は割愛させていただきます。
POPの書き方「文章編」商品紹介は主観的に書く
さて、ここまでPOPの書き方についてご紹介してきましたが、一番頭を悩ませるのが文章です。
各コンビニのWEBサイトに行くと、詳しい商品説明が載っていますので、それを書き写したりするところから始めるのが上達の近道です。
が、できれば店員さんはコンビニ側として情報発信するのではなく、いち消費者として個人的、主観的な感想で商品の魅力を伝えたほうがお客さんに響きます。
POP広告はどこまで行っても広告です。お客さんからすればどうせ売りたいからいいことばっかり書いてるんでしょ。
という疑いの気持ちはどうしても生まれてしまうものです。そこに、手描きで、私はこう思うという主観的な感想が入ることで、真実味が増し、熱のこもった文章になります。
下のPOPをご覧下さい。
出典:twitter.com
タワーレコードのある店舗の嵐のDVDのPOP広告です。文章量もさることながら、にじみ出る嵐への愛がひしひし伝わってきます。この熱量で推されるとちょっと興味がわいてきてしまいます。
近所のタワレコ。今回もにの担店員さんのPOPがすばらしい。 pic.twitter.com/9F4UEfl7cz
— めぐみ (@momo19830830) 2015, 2月 25
ですから、POPの文章を書く際は、対象の商品を実際に自分で食べて、使ってみて素直に思ったことを書くようにしましょう。
美味しそうな言葉、興味を引く言葉
食物を紹介する以上、美味しそうな表現が求められます。そんな時に重宝するのがこちらのデータです。株式会社ビー・エム・エフティーが調査した、「おいしいを感じる言葉」のランキング。
調査方法は、
「おいしい」「食べたい」を感じる言葉を、味覚や嗅覚で捉えた「味覚系表現」、触覚で捉えた「食感系表現」、知識や理解で捉えた「情報系表現」の3つに分けた。全部で269語。
269語のランキングを発表しているんですね。2013年の3つの系統の上位5キーワードをご紹介します。非常に興味深いデータです。
□味覚系表現
1.うまみのある
2.コクがある
3.濃厚な
4.香ばしい
5.フルーティー
□食感系表現
1.ジューシー
2.もちもち
3.もっちり
4.サクサク
5.ホクホク
□情報系表現
1.季節限定
2.揚げたて
3.焼きたて
4.絶品
5.新鮮な
これらの言葉を使って試しにシュークリームを紹介してみます。
もちもち食感のシュー生地の中に濃厚なカスタードクリームがタップリとつまった季節限定のシュークリームです。
こんな感じに文字を組み合わせるだけで簡単に文章ができてしまいました。もちろん嘘はダメです。正直な気持ちを書きましょう。
YouTuberの食レポを参考にする
裏技のご紹介です。人気YouTuber(ユーチューバー)の食レポを参考にするという手もあります。
YouTuberとは、動画サイトYouTubeで独自コンテンツを発信し、その再生数に応じた報酬を主な収入源としている人たちです。
ヒカキンを始めとする人気のYouTuberはそれぞれに独自のコンテンツで注目を集めていますが、みんなこぞってやるのがレビュー系の動画です。
カメラ買いました。iPhone買いました。ソファー買いました。様々なモノがレビューされていますが、コンビニのスイーツやお惣菜をレビューする動画も人気のテーマとして確立されています。
生活に密着した身近なテーマで、かつ、新商品もじゃんじゃん出てくるので、動画のテーマとして扱いやすいです。
「コンビニ名」+「商品名」+「食べてみた」とかで検索してみると食レポ動画がかなりの数ヒットします。POPのテーマが決まったら、まず検索して自分以外の人がどんな感想を持っているのか見てみるのも文章上達の近道です。
コンビニ商品の食レポで人気なのが、木下ゆうかさんと、kattyanさんです。二人とも可愛らしいルックスの女性人気YouTuberです。
木下ゆうかさんのチャンネルは2014/05/21のスタートから、チャンネル登録者数は13万人、動画の総視聴回数は1,700万回という堂々たる数字です。
木下ゆうかさんの食レポはけして上手とは思わないのですが、非常に美味しそうに食べます。そして、率直で素直な感想で商品を説明します。
kattyanさんは木下さんに比べるととても丁寧で的確な商品説明をしてくれています。あと楽しそうに食べますね。
美味しそうな表情で美味しいと言うのが、美味しさを伝えるための一番分かりやすい方法だと思います。紙では伝えきれない動画ならではの強みでしょう。
ただ、今回注目して欲しいのは、率直で素直な感想の部分です。美味しさを伝えるために背伸びした言葉を選んでも伝わらないものです。
等身大の言葉で表現する。それが共感を呼ぶ要素なので参考にしてみるといいです。
アイスのことならアイスマン福留に聞け
そして、アイスのレビューならこの人を置いて他にはいないというほどの新旧のアイスを網羅した圧倒的な情報量と、的確な商品説明で有名な、コンビニアイス評論家のアイスマン福留氏のWEBサイトをチェックしてみて下さい。
コンビニアイスマニア
アイスマン福留YouTubeチャンネル
めっちゃアイス食べたくなります!
アルバイトのモチベーションアップに手書きPOP
さて、アルバイトさんの仕事へのモチベーションアップにも手書きPOP制作は有効です。アルバイトの定着率が悪い店舗のオーナーさんや店長さんは、やる気のない人が多くて困るなぁなんて思われている方も多いかもしれません。
でも、ちょっとだけ確認してみてください。アルバイトさんにやりがいを与えているかどうかを。すぐ辞めてしまう人だとたかをくくり、雑務だけを押し付けていては続くものも続きません。アルバイトといえど仕事です。仕事にはやりがいが必要なのです。
小売業のやりがいといえば商品がたくさん売れることですよね。さらに、それが自分の狙い通りの事だったとしたら、喜びは倍増します。積極的に発注を任せ、どのようにすれば売れるのかということを考えさせます。
手書きPOPを作る際に、どの商品を、どんな言葉で、デザインで、説明してあげればお客さんは興味を持ってくれるんだろう?買ってくれるんだろう?ということを考えさせます。
結果売れた。売れなかったとしても何がダメだったのか?改善してみる。この作業の繰り返しがやりがいにつながるのです。マーケティング用語では「PDCAサイクル」といいます。
Plan:計画を立てる
Do:実行する
Check:評価する
Action:改善する
単純に絵を書くのが好き、楽しいだけという方も勿論います。適正に合わせてやりがいを与えてあげて下さい。ただし、まずはオーナーさんや店長さんが手本を示すということが大事です。